SJC保護者向けコラム P&SJC vol.4:企業選択について

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2018年卒の就活も、採用広報解禁まであと半月ほどとなりました。お子さんから具体的な企業名を耳にするようになった方もいらっしゃると思います。社会をよく知る親としては、お子さんの選択の一助になりたいと思うのは当然のことでしょう。今回は企業選択に関して、私自身の経験も交えながらお伝えしていきたいと思います。

大手会社の注意点

大手企業

まず注意していただきたい点は、「大手企業=有名企業」だと思ってしまいがちだということです。必ずしも「大手企業=有名企業」ではなく、BtoBの業界を中心に、知名度は高くないが大手企業だったり優良企業だったりという会社はいくらでもあります。
以前、当コラムのVol.1にも書きましたが、せっかく世界トップシェアの大手企業に内定が決まったにもかかわらず、親御さんの「そんな会社、聞いたこともない。辞退しなさい」という一言で辞退を決めてしまった就活生もいます。その会社は、連結で従業員が10万人もいる会社でしたが、BtoBだったために一般の知名度は高くありませんでした。知名度は露出度に依存するのであって、企業規模や企業の優良度に依存するわけではないのです。
また、大手と中小の比較についても触れてみたいと思います。平均してみれば大手企業は中小企業と比較して給与水準も高く、ボーナスもたくさんもらえる傾向にあります。福利厚生も、多くの大手企業はしっかりと整備されており、景気の荒波にも飲まれにくいと考えてよいでしょう。傾向として大手企業にはこうしたメリットがあるのですが、大手だからといってすべてが安心というわけではありません。大手企業や有名企業が不祥事を起こして話題に上ることもあるように、大手・有名企業だからクリーンで安心だという証明にはなりません。反対に、企業統治が行き届き、きちんと法を守り、従業員を大切にし、市場から評価され、利益を上げている中小企業もたくさんあります。「大手だから」「有名だから」「聞いたこともない中小だから」とレッテルを貼ることなく、しっかりとその会社を見て判断してほしいものです。
ちなみに、私が11年半在籍していたキーエンスという会社も、まだまだ知名度が低い会社だと感じます。一部上場企業なのですがBtoBということもあり、聞いたこともないといわれることがしばしばあります。ご存知ない方でご興味がある方は検索してみてください。こんな会社もあるのだという一例になれば幸いです。

また、バブル崩壊後は企業経営も厳しくなり、業界再編といわれるほど大きな規模の合併や、中堅以上の企業の倒産、社内においても事業の統廃合や撤退など、ドラスティックな動きをいとわない方向へ経営の舵が切られています。大企業とて例外ではなく、数千人規模のリストラがあったり、事業部や工場が丸ごと閉鎖されたりすることもあります。つまり「会社は存続しても、自分の職場が存続するとは限らない」のです。これで果たして「大手はつぶれないから安心」といえるのでしょうか。

中小企業のメリット

反対に、中小企業にもメリットがたくさんあります。
まず挙げられるのは転勤でしょう。例えば静岡県内でのみ事業を展開している中小企業があったとすれば、異動があったとしてもそれは県内に限定されます。仮に「静岡市内に本社があり、支店が浜松、富士、沼津にある」という会社があったとすれば、「どの事業所に異動になっても引っ越しをしなくて済む場所」にマイホームを持つこともできるでしょう。大手企業ではそうはいきません。規模が大きいということは事業展開もワールドワイドとなります。せっかく建てたマイホームに住めなくなったり、子供が毎年のように転校したり、単身赴任したりする生活を望まない人もいます。そういう人たちにとって、大手を選ばないという選択肢はむしろ理にかなっているといえるでしょう。
また、人によっては中小企業の方が仕事が面白い、と感じることがあるかもしれません。大手企業では効率を優先するため業務が細分化されていることがあり、専門性が高まるかわりに広範な仕事には携われなくなる、そんなこともあるでしょう。いわゆる「歯車」感を感じてしまう場面は、大手企業の方が多いのではないでしょうか。ところが中小企業では人数が少ないため、あれもこれも一人で担わなければならない場面が増えてきます。もちろんそれをこなしていくのは大変なことなのですが、いろいろな経験をすることができ、毎日飽きることがありません。そして、そうした仕事をこなす中で、広範な知識と経験を得ることができます。私は前述のキーエンスから、とある機械メーカーに転職したのですが、今では従業員数が1,000人に迫る同社も、私が転職した当時は360名ほどの中小企業でした。ところがそこには、一部上場企業にいる人材とは全く異なるベクトルの優秀な社員がたくさんいたのです。転職経験が2社しかない私の言葉ですので、あくまで私見として割り引いて読み取っていただきたいのですが、専門分野に特化して能力開発を行っているキーエンスに対して、転職先の会社には「専門分野にももちろん詳しいが、専門以外のことも実によく知っている社員が多い」という印象を持ちました。実に広範で骨太な知識と能力を持つ「スーパーマン」が何人もいました。そして、転職した私自身、そこで覚えさせてもらったことはたくさんあります。思いつくままに挙げると、社内誌の制作にかかわったことで印刷や校正、写真撮影、イラストレーターやフォトショップといった編集ソフトの扱いを覚えましたし、TVCMの制作、会社の運動会などイベントの実施や人材の採用にかかわる会社説明会・面接の実施、教育制度の立案、社内研修講師、全国に点在する全営業所への訪問、社屋の管理、エネルギー管理など、本当にいろいろな仕事をすることができ、そのうちいくつかはそれだけで就職できるレベルになったと思っています。もちろん仕事のボリュームもありましたし、初めての取り組みも多かったですから、戸惑ったり壁にぶつかったりして大変な毎日だったのですが、振り返れば今、それらの経験すべてが自分を支えてくれているのです。

エンプロイアビリティを高めよう!

エンプロイアビリティ

こうしたことを踏まえ、キャリアコンサルタントとして、今後就職していく若者たちに伝えたいことがあります。もはや大手だから安泰、とは言い切れない時代となりました。かといって、中小なら安心できるか、といえばそうではなく、生きていくのが難しい時代になっていることは否めないといえそうです。
では、どうすればいいか? 答えは「エンプロイアビリティを高める」ことしかないと考えています。
エンプロイアビリティとは「雇用され得る能力」のことです。「経験豊富」「仕事が速くて正確」「人柄がすばらしく協調性もある」「物覚えがよく気が利く」「指示を的確に理解できる」「一途で一生懸命」など、最初に挙げた「経験豊富」「仕事が速くて正確」以外は就業経験のない就活生でも持つことが可能な能力だと思いますが、こうした能力を地道に磨いていくことでエンプロイアビリティを高めていくのです。もし会社に「人間性に欠け、協調性もない」「物覚えがよくない。メモも取らず、気も利かない」「理解力が足りない」「一生懸命働かない」人がいたら、そうした人は何かあったときに、真っ先に「切られる」側に回されることでしょう。会社は、たとえ経営が厳しくなろうとも優秀な人材は切りません。もし仮に会社がつぶれたとしても(あるいは不幸にして会社から切られたとしても)エンプロイアビリティの高い人なら再就職は比較的容易となります。また、間違っていわゆるブラック企業に入社してしまったとしても、我慢して働く必要はなく、あっさりと辞めることができます。なぜなら、エンプロイアビリティが高い人には他に就職先などいくらでもあるのですから。そうした方は普通に面接に行っても通る確率は高いと思いますが、特にヒューマンスキルの高い人に対しては応援してくれる人がたくさん出てきます。「仕事に困っているのなら紹介するよ」「あそこの社長を知っているから話してみようか?」など、放っておいても「縁談」がたくさん舞い込んでくるのです。
また、仕事のスキル面でのエンプロイアビリティを高めることも重要です。移り変わりの激しい世の中では、一生安泰という職場など存在しないと考えるべきでしょう。会社や職場は存続したとしても、異動や入退社によって人間関係が合わなくなったり、病気になったりして退職することもあると思います。そんなとき、もし他社で通用するスキルがなかったり、スピード感についていけなかったりしたらどうでしょう。おそらくその先の人生はとても苦しいことになるのではないでしょうか。何が起こるかわからない世の中では「どこへ行っても通用する人間」になっておくことが重要であり、「そこでしか通用しない人間」になってしまうことは大きなリスクになりかねません。
動物に例えれば、仕事とは「狩りをしたりエサを確保したりする行為」です。親の仕事は自分で食べ物を確保できる能力を身につけさせることであり、いつまでも面倒を見てあげることではありません。仕事のスキル面でのエンプロイアビリティは突き詰めると「1人分以上の利益を常に挙げることができる」ということになろうかと思います。1人分以上の利益を出せる人間ならば大企業でも中小企業でも自分の居場所は確保できます。極端にいえば、会社に所属しなくとも一人で食べていくことができるでしょう。反対に、1人分の利益を出せなければ居場所は確保できません。ならば、これからは今まで以上に「どの会社に入るか」よりもむしろ「自分の価値をいかに上げるか」が大事であり、そのトレーニングにふさわしくない会社は避けるべきかもしれません。今の就活生たちはそうした観点から「成長できる職場」「大変でもやりがいのある仕事」を選んでおり、親御さん世代とは企業選びの観点が異なってきているのです。

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