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6.三人の石工の話

働く上での動機づけ(モチベーション)の話です。ドラッカーの著書『現代の経営』から引用します。

何をしているのかを聞かれた三人の石工の話がある。一人は「これで食べている」と答え、一人は「国で一番の仕事をしている」と答え、一人は「教会を建てている」と答えたという。

もちろん、第三の男があるべき姿である。第一の男は、一応の仕事はする。報酬に見合った仕事をする。
問題は第二の男である。職人気質は重要である。それなくして立派な仕事はありえない。事実、いかなる組織も、そこに働く者に最高の腕を要求しない限り堕落する。
しかし一流の職人や専門家には、単に石を磨いたり些末な脚注を集めたりしているにすぎない*
にもかかわらず、何かを成し遂げていると思い込む危険がある。
一流の腕は確かに重視しなければならないが、それは常に全体のニーズとの関連においてでなければならない。
『現代の経営(上)』(1954)第11章:自己管理による目標管理p167-168
*象牙の塔にこもって研究のための研究に没頭する大学教授を揶揄した表現

ドラッカーの他の著作にも同じ話が出てきます。代表作の『マネジメント』やそのエッセンシャル版をお持ちでしたら読んでみてください。(『マネジメント(中)』p70,『エッセンシャル版マネジメント』p137)

『現代の経営』の逸話はここで終わっていますが、この工事現場の一番奥には、こう答える石工がいました。「この地域の心の拠り所を作っている」と。
このように、世の中には金銭を目的に働く人がいれば、能力を高めるために働く人もいます。教会に匹敵するビジョンを心に描いて働く人や、社会にどんな役割を果たしているのかというミッションを意識しながら働く人など、働く動機はさまざまです。

『実践するドラッカー[思考編]』上田惇生監修、佐藤等編訳p19

これから就職して社会で活躍していく皆さんにとって、働く動機はどのようなものでしょうか?今の時点で「これだ!」というものがなくてもまったく問題ありません。
また、いま思っていることが時間・経験とともに変わっていくこともあります。いま就活をしている時期に、ちょっと立ち止まって考えてみることは大事です。(実際に面接で質問されることもあるかもしれません)

1.手段的な動機(例えば、今日の食べ物、よりよい給料、地位、名声)
将来の独立・開業を目指して、きつくても給料のいい仕事で短期間頑張ってみる。
社長・取締役になって組織を動かして大きなことを成し遂げたい。など

2.自分自身の内的動機(スキル、専門知識、やりたこと)
自分の得意分野で仕事をしていく。(安定や収入よりやりたいことに価値をおく)
若いうち(今でなければ)できないことで経験を積んでいく。

3.他者貢献(社会貢献、恩に報いる)
発展途上国への技術・教育援助活動(JAICAなど)をする。
教育者や研究者としてよりよい将来づくりに貢献する。

人それぞれの考え方があり、どれが正解ということはありません。人生のステージによって変化してもいいのです。

最後に、一般の企業に就職して、組織の中で働いていこうと考えている方に一つ考えるヒントを出します。
「仕事の報酬は、仕事」という言葉があります。与えられた役割をきっちり果たして、より大きな役割・高いレベルの仕事に挑戦していく。これを繰り返していくことで自身を成長させていくのです。
金銭的な報酬は気にする必要はありません。自然と仕事の成果にあわせて付いてくるものなのです。

5.企業の目的は?

企業の目的は何ですか?と聞かれると、「利益を上げることです」という答えが一般的です。
しかし、利益を上げることを目標にしてしまうと、利益至上の反社会的な企業活動を行う企業が出てきたり、企業犯罪や企業に勤める社員の不正行為が起きたりしてしまいます。もちろん、企業が存続するためには利益が必要です。十分な利益をあげられない企業は、市場から退出(倒産)しなければなりません

利益とは目的ではなく、存続の条件であり、明日もっとよい事業をするための条件です。また、利益とは、その事業が正しく行われているかを図る尺度です。
こう言ったのが、経営学を生み、経営の原理原則を世に知らしめたピーター・F・ドラッカー教授です。

「利益とは企業存続の条件である。利益とは、未来の費用、事業を続けるための費用である。諸々の目標を達成させるうえで必要な利益に欠ける企業は、限界的な危うい企業である」(『マネジメント』)

では、ドラッカー教授は、企業の目的は何だといっているのでしょうか?
「企業とは何かを知るためには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、ぞれぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的の唯一の定義は顧客の創造である」

「企業の目的は顧客の創造である。したがって、企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。他のものはすべてコストである」
(『マネジメント』)

・利益は目的ではなく条件 ・企業の目的は顧客の創造 
・機能はマーケティングとイノベーション
とても意味のある深い言葉です。頭の片隅にでも覚えておいてください。実際に働き始めて、実感できる(肚落ちする)時が必ず来るでしょう。
 
ちなみに、『マネジメント』という本は、原書で900ページもあり、翻訳されたものも3巻にもなっています。そのため、『エッセンシャル版 マネジメント』という本が出ています。ドラッカー教授と翻訳者の上田惇生先生が共同作業でダイジェスト版を作りました。(ダイヤモンド社 2001.12 300ページ 2,000円+税)
あの『もしドラ』のみなみちゃん(川島みなみ)が読んだ本です。企業で働く者にとっては、繰り返し読んで、学んで、実践するための本(必読書)です。

4.グローバル global

近年、ビジネスの世界で盛んに使われている言葉で、「世界的な」(worldwide)という意味の形容詞です。
中国語では、「全球的」(quanqiu de)と書きます。よりイメージが湧く表記だと思います。グローバル企業、グローバル人材などごく普通に使っていますね。

ひと昔前には、インターナショナル(international)という言葉のほうが一般的でした。「国と国の間、国を跨いで」というイメージです。しかし今では、政治以外の分野においては、これまでの「国」や「国境」という枠組みを超えた動きが拡大し、グローバルという言葉が使われだしたのです。
これからの日本社会は、高齢化が進み、人口も減少していきます。こういった環境下で、国内市場のみでビジネスチャンスを見出していくことは、ますます困難になってきます。自ずと、国外、すなわちグローバル・マーケットで勝負しなければならなくなるのです。

すでに静岡県内の中堅・中小企業の多くがアジアを中心に世界中のマーケットに進出しています。製造業では、海外に工場を作り、現地で生産し現地や第三国の消費者に販売しています。皆さんのまわりの社会人にも海外駐在経験者がいるでしょう。
また、仕事は国内でしながらも、海外の企業とビジネスをしている企業もあります。これまで海外取引は商社にまかせていた企業も、みずから海外企業と提携していく流れになってきました。

英語や中国語ができるというだけではなく、異なる文化の国・ビジネスパーソンとのコミュニケーション、ビジネス思考(ロジカルシンキングなど)も必要になってきます。一朝一夕で身につけられるものではありません。今からでも少しずつ確実に学んでいってください。突然、海外出張・海外赴任を命じられても慌てないためです。
また、就活においては、マインドだけでもグローバルビジネスを意識しておいてください。

3.ICT

ICT:Information TechnologyのITの間にC:communicationが挟まったものです。
ITという語が一般的になり「IT業界」などという使われ方をしていました。
しかし、最近になって通信技術(C)も入れるべきだといった考えを情報通信業(NTTなど)が言いだし、ICTという言い方を盛んにしています。情報通信に関連する企業を目指すのであれば、意識してCを入れて使うとスマートでしょう。

2.QCD

QCD:Quality(品質)、Cost(コスト)、 Delivery(納期)のことです。
もともとは、製造業の用語で生産管理において使われていましたが、最近では一般的に様々な業務や仕事についても使われています。
つまり、与えられた仕事を進める上で、要求されるレベルを満たし(Q)、 与えられた予算内で(C)、締め切りに間に合うように(D)しなければなりません。当たり前のことかもしれませんが、3つのうちどれか一つでも満たすことが出来なければ、0点になってしまいます。

1.OJT

OJT:on the job trainingの略です。教育訓練の手法です。
実際の仕事の現場で、上司が部下に対して、その仕事に必要な知識やスキルを指導することを指します。実際に上司がその仕事を①やって見せて、②説明して、③部下にやらせてみて、④できているかどうか確認する、という4つのステップで実施されます。
OJTと対になる言葉は、Off-JT:off the job trainingです。こちらは、社内の会議室や社外の研修などで学ぶことを言います。

ちょっと脱線しますが…指導役の上司が忙しさのあまりOJTと称して新人社員にマニュアルや参考図書をドンっとデスクにおいて「これを読んでおけ」といった指導をするケースが多くあったようです。「お前ら、自分でやれ、頼るな」でOJTというわけです。こういったこともあってOJTという言葉がネガティブな使い方をされた時期がありました。
しかし、しっかりと教育研修をする企業では、OJTとOff-JTをうまく組み合わせ、さらに個人の自己啓発についても指導し推奨しています。

【プロフィール】

履歴書

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
人事、総務、経理などの管理部門に携わる。採用は、新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。
面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現させてきた。

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